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その日は珍しく夫不在の夜であった。 こんなチャンス滅多にない。 おいしい日本食を1人で堪能し、子供達が寝た後にちまたで流行りの『地面師たち』を1人で堪能するはずだった…  夕方には火事に見舞われ、一息つく間も無く傷害?誘拐?恐喝?事件に巻き込まれ警察が我が家へやってきた。 緊急車両を呼んだのは今までの長い人生で初めての経験であった。しかも1夜で2回… 夫が居ない時に限って何かが起こる。 時計の針が0時00分になろうとしていた頃、ついにご帰還である。 今日あった事を早く話したい。今夜の難局を外国人妻が1人で乗り切り子供達を守り抜いた事を。 玄関で靴を脱ぎながら携帯を耳にあてている。 おいっ!まずはただいまーやろ!まったく…と思うと同時に こんな時間に誰? 一瞬でそれが良いことでは無いと直感した。 「ちょっとー!どこで何してたん?今日はほんまに大変やったんやで!(怒)」 「シィー!今警察に電話してる。一刻を争う。危険な状況だ。話、あとで聞くから」 左手に握ったボロボロの紙切れを近づけたり遠ざけたり… 老眼?いや、ベロンベロンに酔っ払っているせいで字が読めないようだ。 「私は〇〇に住んでいる△△ですが、今帰ってくる道中でどこかから聞こえてきたんです。」 「プス、プス、プス、プスプスプスプス… 人の声なんです。誰かがどこかでずっとプスプス言っていて…」 全身の血の気が一気に引いた… 我が夫はベロンベロンに酔っ払った勢いで警察にイタズラ電話をしてるのではないか… 「家の2階の窓の僅かな隙間から誰かがプスプス言ってて、丸めた小さな紙を落としてきたんです。」 「そして小声でPlease、please、help me ~と言ってきた」 「だから、プスプスです。プスプスプス。え?私?はい?多少飲んで帰ってきましたけど酔ってません!」 電話をしながら部屋中を徘徊する夫の足は千鳥。平衡感覚は完全に麻痺しているようだ。 「ちょっと!電話代わろか?私、代わりに話すよ。」 今日、すでに2回の実地訓練を終了したので自信は満々である。 「大丈夫。酔ってない」 「その道に街灯がなくて紙切れに何が書いているのか読めなかったんですがどうやら誰かが拉致されている。読み上げます。」 「私の名前は○○。この部屋に閉じ込められている。部屋は外から鍵が掛けられ出られない。いますぐこの番号に電話をして伝えて欲しい。→電話番号07********。彼の名前は△△△△、自分の車では絶対に来ないでタクシーかウーバーで来ること。そして絶対に警察には通報しないで欲しい。警察が来ると私は○されてしまう。」 その紙は湿って字が滲んでいた。 この人はこの紙をバレないように握り締め、誰かが来るチャンスをずっと伺っていたのだろうと思うと心が痛んだ。 と、さっき我が家の横で起こった事件がすぐさま頭をよぎった… これは恐らく同じ事件。 さっきの事を早く夫に話さないと。 「さっき警察がウチに来た」とメモに書く。 「あぁ、うちの嫁がもう警察来たって言うてますぅー」 あぁ… 酔っ払いに正しい情報は伝わらない… 「だから私は決して酔っていません!!本当なんです!」 と電話口に大声を張り上げた夫の声は完全に酔っ払いであった。 「OK, YES, THANK YOU」通話終了。 「今から警察ここに来るって。」 えっ? またか…眠い…疲れた…寝たい。 警察が来ると聞いても何の動揺も興奮もドキドキもしない。すっかり慣れてしまったようだ。 「ごめん、疲れたし寝るわ。」 時計の針は午前1時を回っていた。 ベットに入り何とか脳みそを空っぽにしようとしていた矢先… ドンドンドン!ドンドンドン!ドン!ドン!ピンポーン!ピンポーン!ドンドンドン! [...]

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